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第1回タビノコトバ掲載作家のインタビュー③ タビワライフさん
第1回タビノコトバに掲載された作家にインタビューし、旅を文章にすることについて語ってもらう企画の第3弾。
「いつもの散歩道にある、いつもの木が、今日はなんだかハートに見えた」という印象的な写真と文章を掲載してくれたタビワライフのお二人。
「死ぬまで新婚旅行をする夫婦。一度きりの人生、好きな人と一緒に生きていくための旅の途中」と自己紹介をするタビワライフは、2016年の第1回タビノコトバ展のときにはすでに世界一周の途中で、今もなお旅を続けている夫婦です。
現在は以前お世話になっていたオーストラリアに戻り、農作業をしながら暮らすように旅を続けています。
どうして旅を文章にするのか、旅を続けている理由、タビノコトバについて話を伺いました。
僕たちの旅は、2年経った今も本質みたいなものは変わっていない
ー今日はよろしくお願いします。タビワライフのお二人は当時も世界一周の真っ最中でしたね。どうしてタビノコトバに応募しようと思ったんですか?
旅をしている最中に友人がfacebookでシェアしているのを見かけて、面白そうだという軽い気持ちで応募をしました。
ー応募から約2年が経ちました。今改めて自分の作品を読んでみて、いかがですか?
ちょうど応募時期に撮っていた写真の中で印象深かったものがこのハートに見える木の写真でした。
懐かしいような新しいような、うまく表現できないんですがどこか自分たちの作品ではないような感じがありますね。
でも僕たちの旅は、このとき書いたことと今も本質みたいなものは変わっていないんだなと思います。
ーというのは?
旅をしていると、刺激とかワクワクすることはいろいろあるんですけど、反対にちょっとしたことが嬉しかったりする瞬間もあるんです。些細なことですけどホットシャワーがでるだけで嬉しかったりする。そういった小さな喜びへの感度が高くなっていくんですね。
僕たちは旅の中にある小さな幸せが好きで、たまたま歩いている時に見つけた木がハートに見えたってのも、その1つなのかなと。
ーとても印象的な写真です。写真と文章が合っていて、この作品を見たときに最後のページはこれでいこう!と決めたのを覚えています。
旅で気づいた「いかに自分が今いる環境で幸せを感じられるか」
ー実際に文章を書き、応募したことでなにか感じたことはありましたか?
旅を通して、人は良いも悪いも忘れる生き物だなと改めて感じました。
こういった機会にその時その場で感じた事を作品として残せたことはとてもありがたいです。
いま改めてこのインタビューで、そのときの感情や風景を思い出させてもらっています。
ー「旅をしていると素晴らしい景色や忘れられない人との出会いもあるけれど、日常の中にあったしあわせと改めて出会うことも多い」という文章が印象的でした。
長い旅をしている中で、おそらく書きたいことはたくさんあったのかと思うのですが、どうしてこの話を書いたのですか?
日本で生活していた時は、非日常な旅や海外というものに憧れている自分がいました。実際に旅に出てその時間が長くなるにつれて、日常の中にあった安らぎや当たり前だと思っていたものがとても幸せなものだと感じるようになりました。
実際に旅に出てどんな環境にいても自分が無いものを求めているのだと気づきました。
そこから無いものねだりをするのではなくて、いかに自分がいまいる環境で幸せに感じられるか、幸せを作り出すことができるかということを考えるようになったのでこれを書きましたね。
ーこの作品の舞台もオーストラリアで、今回またオーストラリアに戻っているんですよね。
以前お世話になった家族が経営している農場に戻ってきました。旅をしていると、新しい場所に行くのもおもしろいんですが、もう1回あそこに行きたいよねっていうような帰りたくなる場所が増えてくるんですね。
帰りたい場所があるから、新しい場所に行きたくなる。オーストラリアの旅は、どちらかというと「暮らし」に近いんだけど、今回が最後じゃなくてこれから先も何回もっていう思いがありますね。
いろいろな国でそういう家族や場所が増えていけばいいなというのが理想ですね。
たくさんの素敵な作品がある中の一つとして、タビノコトバの一部になっている
ー採用が決まってどうでしたか?その時のエピソードなども教えてください。
自分たちの作品がキレイに飾られているのを見て、素直にうれしく思いました。
それと同時にどこか自分たちのものではないような感じもしました。
たくさんの素敵な作品がある中の一つとして、タビノコトバの一部になっていることを嬉しく思いました。
ーお二人は偶然にも一時帰国中だったので、展示会にも足を運んで頂きました。同じく採用された作家さんとも出会えたかと思うのですが、いかがでした?
当初、展示会は旅をしている最中で行くことができないと思っていたのですが、たまたま涼がネパールで入院して日本に一時帰国するタイミングと重なったので参加させてもらいました。
そこでの出会いはまさに偶発的な出会いで、この場を設けてくださった主催の皆さんに感謝ですね。
ー他の方の作品や、そこでのお話で印象に残っているものはありましたか?
作家さんの中に盲目の方がいらっしゃったんですが、その方が北海道から展示会に参加していたんですね。こんなアクティブな人がいるんだなと驚きました。
旅をしていると、こうだろうと思っていたことが覆されることってあるんですが、タビノコトバの中でもそういう瞬間があって、いい意味で裏切られた感覚があって面白かったですね。
旅をしていて感じること。文章にしていくこと。
ー二人は「死ぬまで新婚旅行をする夫婦」と名乗っています。旅を続けていく動機は?
やっぱり旅っていろいろなことを感じられるんですね。自分がその環境に飛び込むだけで、周りがいろいろ感じさせてくれる。
海外に行ったり遠くへ行くってことだけではなくて、日本で生活していても目線を変えたりすることで旅になるのかなと思います。例えばタビノコトバに応募して、初めての人が集まる会場に行くことも旅のようなものだと思っていて、旅をするように生きていきたいなと感じています。
ー日常を旅のように暮らしていきたい。今の生活もそんな感じですよね
旅ってなんでこんな好きなんだろうと自分なりに考えたときに、新しいこととか刺激とかを感じられるからだと思うんですよね。
1日の中に出会いとか刺激とかが、普段の生活よりも濃縮しているじゃないですか。
日常では基本的に昨日と同じような生活になると思うんですが、例えばいつもと違う道で帰ってみるとか、知らないお店に入ってみるとか、些細なことですがそんなことで旅のような感覚を味わえるんじゃないかと思っていて、自分からなにかをしなくても、そういう環境に飛び込むだけで、周りがわかりやすく感じさせてくれるんじゃないかなと。
ー第1回目は「旅の偶発的な出会い」がテーマでしたが、印象に残っている出会いはありましたか?
すべての出会いが偶発的な出会いだったのだろうと思います。
もう一度、世界を旅したとしても絶対に同じ旅はできないし、同じ出会いはないと思います。
ー旅を文章にしていく未来について。
たくさんの情報が溢れ、効率化を求めるこの時代にあえて手間をかけて旅を文章にしていく、冊子として残していくことに大変ことだと思いますが、その分、タビノコトバには温かみを感じました。
自分たちで写真展を開いてみて、直接会ったことはなかった人と出会うチャンスを得ることができました。そういう繋がりができるきっかけになるので、文章にしたり、発信していくことはおもしろいですね。
ー第2回を応募する人に向けてメッセージをお願いします。
特別なことを書く必要はないと思います。
人それぞれに人生が違うように、旅も違ってすでに特別なものだと思います。
まずは気軽に応募してみてほしいです。
ーお二人の近況を教えてください。
2年半、900日間の「新婚旅行で世界一周」の旅を終えて、これからは「死ぬまで新婚旅行」に出かけることにしました。
よかったらこれからの僕たちの旅も見守ってもらえればうれしいです。
ーありがとうございました。気をつけて旅を続けてください。
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お二人の作品はこちら。
オーストラリアを2人で旅している時、
パースのシェアハウスの居心地が良く、少し長めに滞在していた。
近くにあるスーパーまでの道が、僕たちのいつもの散歩道だった。
晩ご飯のおかずについて話し、買い物をして、他愛もない会話をしながら帰ってくる散歩道。
僕はその道が、その時間が、とても好きだった。
今日も同じ散歩道を、2人で手を繋ぎながらゆっくりと歩いた。
いつもの散歩道にある、いつもの木が、今日はなんだかハートに見えた。
旅をしていると、素晴らしい景色や、忘れられない人との出会いもあるけれど、
日常の中にあった「しあわせ」と改めて出会うことも多い。
そんな再会を楽しみに。
僕たちはこれからも2人で手を繋ぎながら旅を続けていきたい。
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現在、第2回タビノコトバを募集しています。
締切は2018年7月25日までです。要項はコチラから確認してください。
タビワライフの作品が掲載された第1回タビノコトバの冊子は、こちらから購入できます。
また、他の作品は過去の作品ページからも見られます。
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