第2回採用作家ざっきーの連載 「旅の回想」(4) 旅という考え方

第1回・第2回タビノコトバで採用された作家による旅の連載エッセイ企画

採用作家が継続してアウトプットできる場を作りたい
第3回の応募者に、採用されればこんなことが起こると未来を想像してほしい

そんな思いを込めて、連載企画をスタートさせました。

・これまでのタビノコトバを読み、この人の作品をもっと読んでみたいと思っていた人。
・第3回があれば応募してみたいと思っていた人。
・旅の文章が好きな人。

旅の文章を応募し採用された作家による書き下ろし作品を公開します。

 

今回はざっきーさんによるテーマ「旅の回想」:(4)旅という考え方

<連載作家>
茂木麻予:「旅で出会った人たち
RuCoco :「あの頃の私が見た風景
ざっきー:「旅の回想
Miki:「あちこち旅して考えた
黒田朋花:「空想旅行記

連載作家の作品が掲載されたタビノコトバは、こちらから購入できます。
https://tabinokotoba.stores.jp/

ざっきーの連載記事一覧
(1) 過去の旅を巡る
(2) 飛行機の旅を巡る
(3) 会者定離
(4) 旅という考え方

旅には非日常が必要なのか?

」という言葉を辞書で引くと、以下のように定義付けされている。

1.住んでいるところを離れて、よその土地を訪ねること。
2.自宅を離れて臨時に他所にいること

なるほど。
上記の定義から解釈を進めれば、旅というものは本来二つの地点間の距離や目的地のスケールに依るものではないのだろう。

しかしながら、一個人の印象として旅の話題性は「非日常の経験」が重要視されている気がする。
巷で溢れる数々の旅行記は、こぞって国内外の有名所に赴き、そこでは煌びやかなストーリー展開がお約束である。
このような表現をすると、一部の人から「随分斜に構えた考えなのね」と批判を浴びそうだが、私は何もその良し悪しをここで問いたいわけではない。

そういった類の旅行記は、私の中にわくわく感や想像力を与えてはくれるが、どことなく現実味がない。

言うなれば、テレビの向こう側のお話を見聞きしているような感覚なのだ。
それは小学生の頃、偉人伝を読めば読むほどに題材の人物が、自分とは生きる世界が別の人なのだと気づく気持ちとよく似ている。

そうじゃない、私は凡人伝を読みたいのだ。

日常の小旅行

学生の頃、私の通学時間はちょっぴり長かった。
高校三年間は片道一時間半、大学四年間は片道二時間半をかけて、毎日自宅と学校を行き来していた。
当時の私にはそれが日常でなんとも思っていなかったが、社会人になった私があの頃の私に別人格として会いにいけるなら、私は彼女にこう伝えたい。

それはもう小旅行ですね、と。

通学という在り来たりな時間の中にも、旅の要素は沢山あったように思う。

久しぶりに帰省した際に感じたこと

一人暮らしを始めて久しぶりに実家に帰省する際、馴染みのある電車に揺られ目を閉じると、いつかの自分は毎日聞いていた車掌さんのアナウンスがとても耳に心地よく、そして少し寂しい気持ちになる。
車内から広がる景色を指差しながら会話を広げる親子の姿は、きっと母もそんな風に幼い私を色んな場所に連れ出してくれたのだろうという気づきをくれる。

偶然、同じ車両に居合わせた高校生を見つめながら、現役時代ひたすら参考書を片手に通学時間をずっと勉強時間に充てていた必死だった自分が重なる。
10代の頃は、目の前に立つサラリーマンの表情を汲み取ることに考えが及ばなかった。
社会人二年目、会社帰りの私はきっとこの人と全く同じ顔をしている。
思うことはただ一つ。

早く席空かないかな

車窓から広がる景色は、ずっと目にしてきた見慣れた風景だけど、見慣れているということに、こんなにも安心感を感じるのは、私自身が成長して絶対的な時間の経過がそこにあるからだろう。
私が中学生の頃から一切何一つ変わらない実家の最寄り駅の廃れかけた広告でさえ、故郷に帰ってきた私にはほっとするものがある。

そしてその度に思うのだ。

心の琴線に触れる旅は、本当は自分の日常生活の時間の中に沢山散らばっていて、だけど自分がそのことに気付いていないだけなのではないかと。

13歳になる愛犬を抱っこしたその先へ

今年の夏は、地元の花火を13歳になる愛犬を抱っこしながら静かに眺めた。
たったそれだけのことなのに涙が溢れそうになった。

実家暮らしの時は毎日一緒にいた愛犬と、本当は彼女がお婆ちゃんになった今、飽きるほど一緒にいたい。
犬の一生が人間の一生よりはるかに短いことを私は痛いくらい知っている。
来年もまた彼女を抱っこして花火を見られたら、それはきっと奇跡的なことに近いくらいこの子の時間は駆け足で流れているからだ。

川の水のように流れる時間をある一点で区切りをつけて各点を相対的に比較すると、日常生活に寄り添うその人その人の旅が見えてくる。

取り立ててお金をかけた旅でもなければ、みんなの注目を浴びる旅でもないけれど、大切なことをそっと教えてくれる心の鍵のような旅を誰しも経験しているように思う。

ざっきー
第2回(Life)で掲載
橋が好き。
連載記事のテーマは「旅の回想
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ざっきーの連載記事一覧
(1) 過去の旅を巡る
(2) 飛行機の旅を巡る
(3) 会者定離
(4) 旅という考え方

連載作家の作品が掲載されたタビノコトバ

連載作家の作品が掲載されたタビノコトバは、こちらから購入できます。
https://tabinokotoba.stores.jp/

過去の採用作家による連載

<連載作家>
茂木麻予:「旅で出会った人たち
RuCoco :「あの頃の私が見た風景
ざっきー:「旅の回想
Miki:「あちこち旅して考えた
黒田朋花:「空想旅行記

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