第1回・第2回タビノコトバで採用された作家による旅の連載エッセイ企画。
「採用作家が継続してアウトプットできる場を作りたい」
「第3回の応募者に、採用されればこんなことが起こると未来を想像してほしい」
そんな思いを込めて、連載企画をスタートさせました。
・これまでのタビノコトバを読み、この人の作品をもっと読んでみたいと思っていた人。
・第3回があれば応募してみたいと思っていた人。
・旅の文章が好きな人。
旅の文章を応募し採用された作家による書き下ろし作品を公開します。
今回はざっきーさんによるテーマ「旅の回想」:(1)過去の旅を巡る
<連載作家>
茂木麻予:「旅で出会った人たち」
RuCoco :「あの頃の私が見た風景」
ざっきー:「旅の回想」
Miki:「あちこち旅して考えた」
黒田朋花:「空想旅行記」
連載作家の作品が掲載されたタビノコトバは、こちらから購入できます。
https://tabinokotoba.stores.jp/
旅は私の人生の一部となった
17歳で初めて飛行機に乗り、アメリカでホームステイをした。
たった2週間のこの経験がその後の旅好きの私を形成する大きな一歩となった。
大学生になり、アルバイト代の大半を旅費に当て、講義よりも一人旅に自分の時間を割いた。
そして社会人となった今も、何かを求めて月に1回一人旅にでかけている。
言うまでもなく、旅は私の人生の一部となった。
大学4年生に訪れた四国の旅
年齢も季節も行き先もバラバラだった今までの旅。
これまでの幾度にもわたる旅には、一つの関連性もないように見えるが、本当にそうだろうか。
大学4年生の卒業間際に訪れた四国を巡る旅。
高松駅には親切な青おにくんというニコニコ満面笑みの鬼の銅像がある。可愛らしいという気持ちで何気なく撮った1枚のその鬼の写真を、帰路の飛行機で見返していてふと指が止まる。
「青おにくん」という響きにどこか懐かしさがこみ上げる。ひょっとして、幼少期に読んだ『泣いた赤おに』という絵本に登場するあの青おにではないだろうか。
疑問に思い調べてみると勘は当たった。
作中の最後に旅に出た青おにくんは、香川県に辿り着き地元の人々の優しさに触れて、香川に住みこの地を訪れる旅人に親切を届けているらしい。
もちろんこれは香川県の観光PRの一環であり、独自の作話であるものの、思わぬところで知ったこの続編に、私の胸は踊った。
もし幼少期に私がこの絵本に出会うことなく成長していたら、私は高松に暮らす青おにくんに気を止めることはなかっただろう。
社会人一年目に訪れた岡山の旅
社会人1年目の冬に訪れた岡山の旅。
行きの飛行機でふと手に取った機内誌の何気なく開いたページには、全日空の社長さんの話が取り上げられていた。
彼の話の中に初めて日本で第九が演奏された地、板東について書かれている一節があった。
そこは1年前、自身の専攻がドイツ文学だったこともあり、四国を巡る旅の最終目的地として選んだ場所だった。
まさか機内誌で、過去訪れた土地の名を目にするなんてと一人感動を覚えた。
橋好きの私は、この岡山旅で瀬戸大橋を眺めるために倉敷に向かった。
夕日に照らされた瀬戸大橋とその先に広がる四国をただ静かに見つめると、同じように1年前、四国を巡る旅の中で、坂出から瀬戸大橋とその先に続く本州を眺めた大学4年生の自分と、視線が合った気がした。
もうあの頃の自分の気持ちを思い出すことはできないけれど、確かに悩んでいただろう大学4年生の自分が、はるか遠い橋の先にいて、本州を眺めながら未来の自分を思い描いている。
今、本州の地にたった私はとても不思議な気持ちになった。
きっと旅は繋がっている
訪れた土地より知らない土地の方がはるかに多い。
その中から何気なく選ぶこれからの旅の目的地の選択肢一つ一つは、今までの旅がそうだったように、きっと関係ないように見えてちゃんと繋がっている。
それは過去、現在、未来という自分の時間のように。
だがきっとそれは格別驚くことでもないのだろう。だって旅は私の人生の一部なのだから。
連載作家の作品が掲載されたタビノコトバ
連載作家の作品が掲載されたタビノコトバは、こちらから購入できます。
https://tabinokotoba.stores.jp/
<連載作家>
茂木麻予:「旅で出会った人たち」
RuCoco :「あの頃の私が見た風景」
ざっきー:「旅の回想」
Miki:「あちこち旅して考えた」
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