【作家・支援者インタビュー⑤】加藤亜由子が語る「旅を文章にすること」

加藤亜由子

タビノコトバ支援者 & お一人さま温泉旅創設者 加藤亜由子

第2回タビノコトバのクラウドファンディングで支援をしてくださった方にインタビューをする企画の第2弾。その2回目は、第1回でも支援をしてくださった加藤亜由子さん。
第1回で多大な支援をしてくださった加藤さん。スタッフがお礼を伝えに行ったときのエピソードを綴った作品は、vol.2の本にも掲載されています。

ご自身でも単身で温泉宿を訪れ、それらの情報をまとめた「お一人さま温泉旅というサイトを管理する加藤さん。
どうして旅を文章にするのか、旅をする理由、タビノコトバを応援してくれる理由について話を伺いました。

 

そんな戸惑うあなたの背中、そっと押してあげたくて、このサイトを作りました

お一人さま温泉旅のサイトは実におもしろいですよね。40記事以上書いてありますが、そもそもこのサイトを立ち上げようと思ったきっかけは?

元々知り合いの方が「ひなびた温泉研究所」というサイトを運営されていてるのですが、それを拝見し、ステキ!楽しそう!と、感化されました(笑)。自分も別の切り口で温泉サイトを作ってみたいなと。「女性一人でちょっと辺鄙な温泉に行くのは面白いね」って言ってもらえたのも大きかったですね。

ー女性一人で温泉宿に出かけるって珍しいですもんね。

「憧れの大人温泉ひとり旅。やってみたいと思うけれど、どこが自分にあうのか分からないし、初めてだから、心細さや不安もある。そんな戸惑うあなたの背中、そっと押してあげたくて、このサイトを作りました」と書いてある通り、そっと背中を押せればいいなと思って作りました。

ー読んでくれてる人の声とかってありますか?

はい、反応をいただけると嬉しいですね。また、温泉好き・秘湯好きの方のコミュニティもあって、「今度行ってみます」とか「ここいいよー」とか、行ってよかったの感想をもらえたりします。楽しいですね。

ーこの記事を読んでほしいとか、この温泉宿はよかったとかってありますか?

トータルで好きな旅館は、長野の青木村にある「ますや旅館」で、島崎藤村が逗留していた宿なんです。お湯がいいんですよ。

ーうれしそう。にやにやしてる(笑)

お湯が柔らかくて、源泉掛け流し。長湯向きのぬる湯で、加温もしてないのに、ちょうどいいお湯加減。
お客さんも多くないからだいたい独泉で、2時間とか本を持って入れたりします。最高級の布団に入ってるみたいな感覚を味わえましたね。

ー人は好きなことを紹介する時って、やっぱりニヤつくんですね(笑)

ますや旅館の隣には観光客も入れるけれど地元の人のための共同浴場があるんです。そこは源泉が下から沸いていて同じお湯なのに、やっぱり鮮度が違うんですね。泡づきがすごくいいんですよ。
同じことが山口の長門湯本温泉でもあって、共同浴場と旅館が併設されているんですが、共同浴場の下が源泉なんです。両方入ってみたんですけれど、やっぱり共同浴場のお湯が一番いいんですよ
お湯は地元の人のものなんだなって、それを観光客の人は入らせてもらうんだなって。

ー「お湯は地元の人のもの」なんだか、いい言葉ですね。

お一人さま温泉旅公式サイト
お一人さま温泉旅

自分なりの判断材料が増えてくる楽しさを感じている

ー旅している時は、書くことを考えながら旅をしていますか?帰って写真を見返しながら文章にしますか?

このサイトは紹介がメインですが、メモとかはしないですね。それにとらわれると楽しめなくなる自分がいるので。

ー記録することを目的にしないようにしている。

お湯に入ってるより写真を撮ってる時間のほうが長くない?みたいなのは、やっぱり嫌ですからね。こういう温泉に一人で行くのもよくない?って共感してもらえる人がいればいいなと思って、帰ってから書いていますね。

ーサイトを続けていくことのモチベーションや楽しみはありますか?

見てくれる人の数が増えていく収集癖みたいな意味で「いいね」の数が増えてく楽しさはあるのかもしれないですね。
あとは、温泉の違いがわかってきたっていうのもありますね。最初は、景色とかご飯のおいしいさとかで温泉宿の良し悪しを判断していたんです。

ーたしかに一般的な温泉の良し悪しの判断はそこですね。

数を重ねると泉質の違いだとか、自分なりの判断材料が増えてくる楽しさは出てきましたね。

ーそれを記録することで振り返って比べられるようになりますしね。

泉質のおはなし一つとっても、PH、アルカリ、酸性など、計測器をもって数字でしっかり把握される方もいれば、入った瞬間のお湯の感触で十分だ!という方もいる。混浴では、基本的に湯浴み着を着ますが、それが安心だという方も入れば、温泉が直に肌に触れていないのが物足りないな〜と思う方もいる。

ーいろいろなこだわりポイントがある。そういうことを分かり合える人がいるっていうのは嬉しいですよね。

いろんな温泉の楽しみ方があるんだな〜と、教えていただく機会も増えて、知識も増えてきました(笑)

ー行きたいところや行ってみたい温泉とかはありますか?

東北はまだあまり行ってないので行きたいですね。あとは、五島列島も行ってみたいですね。去年の夏、軍艦島とか外海地区っていう潜伏キリシタンの方が多かった地区に行って興味がわきました。

ー行きたい場所がどんどん出てくる。

本で読むことと、その土地に行くことでわかることが違って、吉田松陰の生家って萩の街の中心地からかなり離れているんですよね。お城があって、武家屋敷があって、城下町があって、少し離れたさらに山奥の高台のところに生家があった。随分遠くにあるなと思ったんですが、でもそこから萩の町が一望できるんです。少し引いた視点で町を見られたんですね。なんかそういったことも、彼の性格や業績に関係したのかなとか想像するのが楽しいですね。
行かないとわからない、行ってわかる、歩いてわかる。そういうことも好きなのかもしれないですね。

指図されない旅が好き。修学旅行って楽しくなかったんです

ーどんな旅が好きですか?

指図されない旅ですね(笑)
空き部屋を確認するために旅館に電話をすると「今わかる人いないから、またかけて」みたいな、そんな自由さあると好きですね。それくらいのんびりとした、商業的じゃない雰囲気に惹かれます。

ーじゃあ反対に、自分の意志とは異なる方向に流れていく旅は、好きじゃない?

そうですね、だから一人で行くんだと思います。修学旅行って楽しくなかったんですよね。私はこのお寺を見たいのに新京極に行きたいとか、ここにまだ居たいけど次に行こうとか。やっぱり自分のペースを崩されない旅が好きですね。仕事はそういうわけにいかない部分があるから、その真逆をやりたいんだと思います。

ーこれまでの人生の中で印象的な旅や、「自分の中であれは残ってるな」という旅はありますか?

母親が亡くなった後に岡山に行った旅ですね。
最期の一か月半くらいは病院に寝泊まりしていたので疲労感が大きくて、どこかに行かないときついなと思って、岡山の奥津温泉に向かったんです。その途中にタコが有名な港町があって、そこに一泊したんですね。
そもそも日常を離れたいなと思って旅をしたんですけど、ちょうど仕事に迷っていた時期でもあって、今後どうしていこうかなとかいろいろ考えたりしながら、地元の人に紹介された美術館に向かったんですね。
そしたら、そこに東京タワーの絵があったんです。岡山なのに、東京タワー。
当時の職場が東京タワーの近くで、東京タワーは職場のイメージそのもので、そこから離れて考えたいなと思っていたのに、切り離されない感じが、印象的でした。
やっぱり仕事が好きなんだろうなって。別にやれって言われてるわけじゃないんですけど。

ーその絵を前に、感じたことって?

「逃げてんじゃないよ」じゃないですけど向き合わなきゃなと思いました。そのあと、奥津温泉に行って温泉に入りながら、次の仕事はこうしようっていろいろ考えて、これはやる、これはやらないって覚悟を決めて、色々自分のことを決めたんですよね。その旅は印象的です。

ーそれぞれの印象的な旅の話は、何度聞いてもいいなと思います。一人で旅をする良さは?

頭を整理するために旅行することはありますね。なので、温泉に行くときも一人で行くときは考えることをする時間が好きですね。ごちゃごちゃしていたのをこうだったんだと紐解く時間が多いのかなと思います。
反対に後輩の子と行く温泉旅行は、ただひたすら愚痴を言う(笑)
一瞬はリフレッシュするんだけど、次の日にはダメになる。「効果が薄い旅」って後輩の子と言ってますね(笑)

ずっとやめていた詩を、もう一回やりたいなと思った

ー旅でのことを含めて、文章を書いていくことへの未来をお聞かせください。

タビノコトバの1回目、2回目ももちろんなんですが、宗玄さんが小説を書いていたじゃないですか。それにすごく感化されて、最近、ずっとやめていた詩をもう一回やり始めたんですよ。先日、朗読会があったので、書いて朗読をしてきました。
詩集を読むのが苦手だし、詩人は全然知らないし、昔は単純に楽しく書いていただけだったので、勉強という勉強を全然していないから詩の基礎体力みたいなものが全然ないなと思ったんですね。ほかの詩人の方にアテンドしてもらいながら、勉強というか基礎体力をつけるところから始めようと思って取り組み始めました。

ー素晴らしい。やっぱりそれは基礎体力が必要だと思ったから?

はい。20代の時とかを自分で振り返って分析してみると、楽しく書いていただけの子が運よく新人賞をもらったという感じで。本当は切磋琢磨努力した道の先にそういう賞を頂くのだろうけど、運良く落とされることが一回もなくトントンといってしまった。でもそうすると、何が足りないのかとか何が悪いのかとか全く考えないまま先へ進んじゃうんですね。
だから、その道の入り口に立った瞬間、何の基準の目も持っていないから溢れる情報に向き合うと、こんなの無理!とパニックになっちゃう。それが20歳の頃だったなって思います。
それと同じにならないように勉強ではないですけど、ちゃんとやってみようかなって始めました。タビノコトバがきっかけですね。

ーそれはうれしいです。年齢を重ねて書いてみた作品って、以前に書いたものと比べて、変化みたいなものはありますか?

こずるい(笑)

ーテクニックを使っちゃうってことですか?

そう。以前は単純に楽しく書いてたものが、今は少し受け狙いを考えているのかな。何かを知ったんでしょうね(笑)

ー今の自分から見た時、どちらがいい作品ですか?

今の作品を2編くらいしか書いていないから正直まだわかりません。ただ、以前の自分ってすごいなとは思います。

ー面白い。僕は写真を撮るんですが、全く同じ感覚がありますね。写真を始めた頃はただただ楽しく撮っていたんですが、その時の作品がよかったりするんですね。今、それらを見返すと、この時みたいにはもう二度と撮れないなと思う。作品の良し悪しは別にして、同じようには撮れないんですよね。

もう知らないようにはできないから、それを埋めるのが基礎体力をつける勉強なのかなとは思っています。

ーその時その時で向き合いながら作品を作っていけば、後々見たときにこの時はこれでよかったって思うだろうし、そういう感覚を大事にしようと思って僕自身は今日も写真を撮っています。
それにしても、なにかをスタートさせるきっかけになってくれたのなら、すごく嬉しいです。

来年には、やめたんだよ、とか言ってたりするかもしれないけど(笑)

ーそれはそれでいいんですよ。

好きなことを書くっていいなと思って。

素晴らしい暇つぶしをやりたいんだと思う

ー1回目2回目と続けて支援をしてくださっていますが、どうして支援してくださるのですか?

素晴らしい暇つぶしだと思って(笑)

ーははは、いい言葉です。

日常生活するためにお金を稼ぎますよね。でも、さっきの旅館の「またかけて」もそうですけど、目的にお金が絡まないことって、すごく贅沢だなと思っています。不必要じゃないですか、別になくても生きていけるし。
例えばタビノコトバも、もっと簡単なウェブライターとかをやった方が小遣いになりますよね。でも、そうじゃなくて純粋に表現したいことに時間を費やすっていうことが、すごいいいなと。学生がやるのはわかるんですが、社会人になってからやるっていうのが最高の暇つぶしだなと思っています。

ー暇つぶしで止まらなくてよかったです(笑)

羨ましいなって思います。今こういうことをやろうと思ったらウェブ上でいくらでもできるじゃないですか。ウェブ上完結であれば、むしろ労力もお金もかけずにやれることだと思うんですけど、そこをちゃんと冊子にしてリアルの展示会にしてってところまで落としてるところがいいですよね。

ーリアルな体験っていいですよね。

それだから得られることってある気がして。大人がやるっていう最高の暇つぶしですね。

ー今後はどんな活動をしていく予定ですか?

作ることが好きなので、目的を変えながらアウトプットしていくかもしれません。
おひとりさま温泉旅」は女性が一人でふらふらと温泉に入って、こういう場所もあるよ!と紹介し、共感できる人とつながれたら楽しいなって思ってやっていく。
詩は基本的には自分をベースに、自分のために、読んでくださる方を巻き込んでいけるような詩が書けるようになりたい。
もう一つ、これはすごく内輪なんですけど、旦那の気になった日々の発言をメモしていたのですが、それを友達に話したら4コマ漫画にしたら面白そうだねって言ってくれて、知り合いの方にイラストレータの方を紹介してもらおうとしています。やれるかどうかわからないけど、そんなことを考えています。

ーやっぱり作るのが好きなんですね。

いろいろな表現なり目的なりを広げようかなと思っていますね。情報やマンガなんてどれが残るかわかんないし、先のことはわかんないんですけど、いろいろやってみようかなって思い始めたところかもしれないですね。

ー素晴らしい暇つぶしですね(笑)

暇つぶしをやりたいんだと思う。すごいいい暇つぶしだもん。

ーありがとうございます。

 

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